第4章 12月16日【あと8日】
表通りを通り抜け、駅に着く。
「それじゃあ、また明日」
次の電車まであと10分か。
都内のホームなので、かなり広い。だから、駅のホームまで歩けばちょうどいい時間になっているだろう。
森下先生に別れを告げ、その方向へと歩き出す。
「……………あの」
「なに?」
「なんで付いてくるの?」
ちゃんと別れを告げたはずなのに、森下先生は私の一歩後ろをずっと付いてくる。お酒が入っているとはいえ、頭ははっきりと冴えている。だから、見送りとか必要ないのだけど。
「俺もこっちだから」
「あ、そうなんだ」
変に先入観を持ってしまったようだ。
どうも最近は自意識過剰が過ぎる。
そして結局、森下先生と同じ電車に乗ることになった。特に話すこともなく、揺られること10分。
「降りる所も一緒?」
「みたいだね」
こんな偶然なんてあるのだろうか。
降りる駅が同じということは、かなり近所に住んでいるということになる。これなら、毎朝顔を合わせていてもおかしくないのに。
なんて疑問を抱きつつ、駅を出てマンションに向かう。そしてやっぱり、同じ方向だ。
「本当にこの辺りに住んでるの?」
こうも方向が同じというのはなかなか信じられない。
「バレちゃったか。変な輩に絡まれないように送ろうと思ったんだ」
それならそうと言ってくれればよかったのに。そうしたら、全力で拒否れていた。
「ありがとう。でも、家この辺りだから、もう大丈夫。また明日」
半ば強引に帰らそうとする。
だが、相手もなかなか頑固だ。
「いや、ちゃんと送るよ。もうこんな夜中だし」
「私だってもう大人なんだから大丈夫だってば!」
こんな夜中に近所迷惑だと知りながらも、少し声を張り上げてしまう。
「本当にもう────」
「何してるんですか?」
「っ………!?」
森下先生の肩越しに見えた声の主に、私は背筋が凍りそうになった。