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死神に教わる甘え方。【R-18】

第4章 12月16日【あと8日】


「森下先せ……んんっ、森下さんとこういう風に落ち着いて話すのって初めてかも」

今までは顔を合わせれば言い合いだったし。
何より、私が一方的にやたら牙を剥いていた気も……しなくはない。

「確かに。俺ら、仲悪かったし?まあ、俺はただの照れ隠しだったけど」

特に意味の無い言葉だと思う。
彼は事実を淡々と述べているだけ。

それにいちいち反応してしまう私はおかしいのだろうか。

ビールを一気に喉に流し込む。

あれ?
こんなに美味しかったっけ。

「お、いい飲みっぷりだな〜」

そう言いながら、店長がお皿を片手に店の奥から出てくる。すごく香ばしくていい香りがする。

「はい、お待ちどーさん」

目の前に置かれたのは、まだ熱々で湯気の立つ、唐揚げだった。

「ただの唐揚げじゃないんだよな、これが。食べてみ」

自信満々の余裕の笑みで、カウンター席に座る私を見下ろす店長。少し癇に障ったのは言うまでもない。

「いただきます」

一口サイズの大きさなので、ぱくりと全て口の中には入ってしまう。

口の中に広がるニンニクの香り。
噛むと溢れる肉汁。じゅわ〜という効果音が似合う食感だ。

「んっ!なひほれ!おいひい!」

噛めば噛むほど、肉の美味さとニンニクの香り、ぱりっと香ばしく揚がった衣がどんどん旨みを増していく。唐揚げの上にかかった塩ダレがまた旨さを倍増ししていく。そこらにあるような唐揚げとは何かが違う……

「それはな、鶏のささみの唐揚げだ」

「ささみ?」

「もも肉よりヘルシーだし、何より普通の唐揚げより味が軽いだろ?しつこくないし、安いし、ヘルシー。少しパサつくが、調理方法によってはそれだって変えることができる」

言ってる事の8割ほど聞いていなかったが、とりあえずこのいけ好かない店長が作る料理は(認めたくはないが)美味しいということが分かった。それだけ分かれば十分だ。
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