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死神に教わる甘え方。【R-18】

第4章 12月16日【あと8日】


「着いた。さ、入って」

連れてこられたのは、レストラン街から少し離れた小さな居酒屋だった。路地裏にあるせいか、あまり人の寄り付かなそうな古びた外観だ。

でも、こういう店は割と嫌いじゃない。というかむしろ、小洒落た店よりずっと好きだ。まあ、居酒屋だなんて行ったことがないんだけど。

入った瞬間に美味しそうな食欲をそそる匂いか鼻をくすぐる。

「わっ……これが」

これが居酒屋。
ビールの匂いと、香ばしい匂い。
店内はそんなに広くはなく、カウンター席に数名座れるくらいの席数の少なさだった。

「おっ、昨日ぶりじゃねえか」

「ああ、そうだな。今日は連れもいるけど」

森下先生と顔なじみなのか、仲がよさげな雰囲気の店員が私に視線を向ける。目が合ったから、ぺこりと頭を下げて顔を上げると、その店員さんがにやりと笑う。

「お前が女連れって珍しいもんもあんだな。良かったじゃねえか!ついにお前にも女が出来たかー」

第一印象は、自己解釈がすごい人。

「違うって。俺の同僚。ま、俺はいつでも迎える準備は出来てるんだけど」

そう言って森下先生が横目で私をちらりと窺うように見る。少し恥ずかしくなり、肘で森下先生の腕を突く。そして、後悔する。

「ひゅ〜!お嬢ちゃんったらモテモテだねぇ〜。イチャイチャしちゃってぇ〜」

もういい。帰る。
そう言って店を出ようとした私を森下先生が必死になって止める。

「店長はこんなだけど、飯は美味いから」

あ、店長なんだ。
美味い、という言葉にすんなりと頷き、適当な席に座る。それにしても客が少ない。というか、いない。

「客が少ねえって顔してんな」

「あ、いや……まあ、はい」

嘘はつけない。
というか、バレているのなら隠す必要が無い。

「認めんのかよ。素直な女は結構好みだわー……って、おい洸〜。んな睨むなよ〜」

こう……?
なんか意外な名前。
というか、知らなかった。
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