第5章 さみしさに君の襲来
あぁ…
あれをやっても、これをやっても
君には届かない。
マルフォイの名前なんて、ただの飾りにしか過ぎない。
最近、そんな事を痛感してきた。
毎夜見るのは、幸せな日常ばかりだった。
さすがに僕の精神も疲れてきた。
夢では彼女に惑わされ…
現実では、翻弄され…。
擦り寄ってくるパーキンソンを突き放して、僕は外へ出た。
サク、サク、っと雪を踏む音が心地いい。
丘の上へ登って、一本の木に寄りかかる。
そこから見えるのは、凍った湖だ。
僕は何かと、ここへ来る。
落ち着くんだ。
木を背にして、そこに座った。
雪の冷たさなんてどうでもよかった。
とにかく疲れていた。
......
何十分もそこに居ると、疲れは徐々に寂しさに変わっていった。
パーキンソンを呼ぼうと思えば呼べた。
しかし、誰でもいいワケじゃない。
「………皇……」
僕は呟いて、うつむいた。
僕が求めてるのは、彼女一人だ。
皇、皇、皇…
彼女の事を考えた。
柔らかい、いつもウォーカーに向ける笑顔
夜の森で怯えていた顔
寮で、蛙に吃驚していた顔
ハロウィンパーティを抜け出し、振袖姿で眠っている時の仕草…
こんなにも僕は、皇が中心で回っているんだ。
「…皇…」
もう一度、声に出して呟いた。
「…あら、ドラコ…?」
さみしさに君の襲来
自然に出ていた涙は、暖かい小さな手が拭ってくれた。
きっと僕等はどこかで繋がっていたんだ。
愛してる、皇。
無意識に呟くと、彼女は大好きな笑顔で笑った。