第6章 ずっと見ていました。
今日は大きな病院に診察に行く日。
馬車に揺られながら、外を見ていた。
『あっ…』
また彼がいた。
『っ!?////』
目が合った。
ドキドキと鼓動が煩い。
いや、偶然だ。必然であるはずがない。
私は馬車に乗っているのだから。
まだ早い鼓動を抑えるように、私は深呼吸した。
その日の夜。
昼間の出来事を思い出して寝付けないでいた。
ボーッと天井を見つめていると窓から差し込む月明かりを遮って、部屋に影が差した。
『え?!』
窓に目を向けると彼がいた。
嬉しさより驚きで、胸が高鳴る。
私が唖然としていると、彼は私に微笑んで窓を開けると室内へ入り込んできた。
「はじめまして。私、ファントムハイヴ家執事のセバスチャン・ミカエリスと申します。」
『え、あ、あのっ!?』
私があたふたしていると、セバスチャンと名乗った彼は再び微笑んだ。
「昼間にお会いしましたよね?此方の前を通る度に視線を感じたのですが…」
う、嘘…なんで分かるの?
セバスチャンは顎に指を添えながら、私をチラリと見た。
「ご安心ください。取って食べたりしませんよ。あまりに熱い視線でしたので、ちゃんとお会いしたくて参りました。」
優雅にお辞儀をしたセバスチャンの言葉に、私は耳まで赤くなるのがわかった。
「貴方のお名前は?」
『名無し…です』
「名無しさんですか。可愛らしい貴女にピッタリのお名前ですね」
そう言って、セバスチャンはまた微笑んだ。
失礼しますと私に声を掛け、セバスチャンはベッド脇の椅子に腰掛けた。
「では、何をお話しましょうか?」
そうして、私と彼の逢瀬が始まった。
to be continued?
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