第5章 甘さを求めて
もうすぐバレンタインデー。
東洋では、この日は女の子が男の子にチョコレートをあげるらしい。
何で、チョコレート?って思ったけど、この事を教えてくれた劉さん自身、よく分からないらしい。
此方では、男の子からプレゼントするのが一般的だから、面白いとも思った。
私もあげてみようかな?
なんか、義理とか本命とかあるみたいだけど、とりあえず坊ちゃんでしょー、フィニとバルドと田中さん。
メイリンは女の子だけどあげてもいいんだよね?
それからー
『あ、セバスチャン』
「はい?おや、名無し。どうしたのですか?」
キッチンを覗き込めば、チョコを渡す予定の一人、セバスチャンが夕食の支度をしていた。
1日に何度も顔を合わせるが、何度見ても胸がドキドキと早くなる。
『あのね、もうすぐバレンタインでしょ?だから「私からのプレゼントが待ちきれないのですね」
『え?』
作業の手を止め、セバスチャンは私の顎を掴み顔を寄せてきた。
「待てないようでしたら、今差し上げましょうか?」
『ふえっ?!/////』
今にも唇が触れそうな距離で、紅茶色の瞳に射抜かれる。
突然の事で思考が停止してしまう。
「どうしましたか?いるんですか?いらないんですか?」
え、いや、欲しいけど…そうじゃなくて!
『っそうじゃなくてっ!//////』
慌てて声を荒げれば、セバスチャンは残念そうに身を引いた。
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