第3章 極星寮
〜創真side〜
「さあ出来たよ。二人とも召し上がれ」
ちょっとすると一色先輩が皿を持って戻って来た。
(そういや、一色先輩の料理初めて食うな。どんなんだろう)
「サワラの山椒焼き、ピューレ添えだ」
「いただきまーす」
「一色先輩の料理、久しぶりに食べるなー。ではいただきます」
俺と九条はサワラを口にする。
「……!」
衝撃だった。
(美味すぎる!)
「春の食材を生かしきった料理ですね、さすが一色先輩。すっごく美味しいです」
九条も美味そうに食べている。
だが、九条は俺のようにそこまで驚いてはいなかった。
俺と違って一色先輩の料理を食べたことがあるからだろう。
(こんな繊細な皿をあんな短時間でまとめあげたっていうのか……!?他の寮生とはレベルが段違いだ。いくら2年生っていったって、それだけでここまでの品が作れるってのか!?)
俺があまりの美味さに固まっていると。
「ところで創真くんさ」
一色先輩が話しかけてくる。
「始業式でなかなか面白いことを言ったらしいじゃないか。九条くんから聞いたよ」
……心なしかさっきから一色先輩の様子が違う。
声のトーンも少し低い。
「遠月の頂点目指すってことは、君が思っているほど甘くないかもしれないよ」
「……!」
「改めて自己紹介させてもらおう」
そう言って一色先輩は三角巾をとった。
「遠月十傑、第七席」
「……!?」
(まさか……!!)
「一色慧だ」
予測が当たってしまった。
「さあ、お次は創真くんの料理を食べてみたいな」
それはまるで俺を試すつもりだ、と言っているようだった。
「一色先輩だけずるい」
その時、九条も話に入ってきた。
「……!」
「私も君の料理を食べてみたい」
そう言った九条は、さっきとはまるで違う雰囲気だった。
(今日廊下で話した時と同じだ……!)
「見せてごらん、君が皿の上に語る物語を」