第2章 編入生
がニコニコ笑顔のまま言った言葉に、恵が少し反応する。
「この学校のてっぺんを獲る予定の人にとっては、あれくらいは朝飯前だね」
の雰囲気はさっきまでとはまるで違う。
笑顔はそのままだが、纏っているオーラは思わず物怖じしてしまいそうなものに変わっていた。
敵意こそ感じないものの、それは明確に創真に向けられていた。
「……何が言いたいわけ?」
その空気を感じ取った創真も、少し声のトーンを下げる。
「んー、つまりですね、この学園の頂に立つ者は一人だけでいいってこと」
「……?」
創真はの発した言葉の意味をいまいち理解できなかったようだ。
だが隣にいた恵は、一瞬で緊張したような表情になった。
つまり恵には彼女の言葉が理解できた、ということだ。
「まあ、とにかく」
がその場の緊迫した雰囲気を和らげるかのように、先ほどの柔らかい物腰に戻った。
「幸平くん、さっきも言ったけどこれからよろしくね、色々と。遠月での学園生活、頑張って」
少し意味深な言葉を残して、彼女は去っていった。
その場に残された創真と恵の二人。
「ふぅ……よ、良かったぁ」
恵が安堵のため息を漏らす。
彼女はずっとハラハラしていたのだ。
「創真くん、入学早々すごい人と知り合っちゃったね……」
「へー、あいつやっぱりすげー奴なわけ?」
「す、すごいどころじゃないよ!詳しい説明はまた今度するけど、今日の料理だってあのシャペル先生の授業で当たり前のように評価Aとってたし……」
「あーそういや、あの先生怖そうだったけど、九条と話してる時は楽しそうだったというかなんというか……」
「ちゃんはシャペル先生に気に入られてるから。それだけすごいってことだよ」
「へぇ……そうなのか。まあ、また今度ゆっくり教えてくれよな!」
「う、うん」
そこまで話したところで、については一旦区切りがついた。
(にしてもあいつが纏ってた空気?みたいなもん、ただ者じゃなかったな……)
創真は疑問は残るものの、とりあえず彼女のことは横に置くことにしたのだった。