第44章 〜44〜番外編③
夕餉も食べ終わり、そろそろお開きといった時間になった。
優鞠と台所で食器を片付けていると、誰かが訪ねてきたようで部屋が騒がしくなった。
「……ん?なんだろ。ちょっと見てくるね」
「うん」
私が部屋を見ると、怒った様子の秀吉さんと三成くんがいた。
(…………怒ってる……ちょっと様子見よう……)
私は台所に戻り、優鞠を連れて音を立てないように部屋を覗き込む。
「まったく、お前ら宴をすっぽかしやがって……」
「家康はともかく、俺は初日出ただろ」
「出てもすぐ帰っただろ。お前らが居ないせいで、俺や三成がどれだけ苦労したと……」
「三成はともかく、女たらしのお前には最高じゃないか」
「俺は花魁には興味ないし、そもそも女に困ってない」
「へぇ、流石安土一の女たらしだな」
「……政宗……」
秀吉さんはゆっくり政宗に近づくと、拳を振り下ろした。
「いってぇな秀吉!殴ることねぇだろ!」
「……ごめんなさい秀吉さん」
「やけに素直だなぁ、家康」
「……殴られたくないんで」
「……三成、捕らえろ」
「はい」
三成くんは申し訳なさそうに家康の腕を押さえ込んだ。
「三成!離せ!」
「申し訳ありません、家康様。秀吉様の命なので出来ません」
「家康……」
「…………ってぇ……」
(……流石、皆のお兄ちゃん……2人が怒られる弟にしか見えないよ……)
「第一、宴は武将全員出席だと信長様が仰っただろ」
「……そうですね」
「……仕方ないだろ。俺も家康も恋仲の女がいるんだから。」
「それはそうだが……」
「……家康様も政宗様も恋仲の女性がいらっしゃるのですか?」
三成くんは初耳と言った顔で2人を見るが、秀吉さんが片手で制した。
「……三成、とりあえず黙ってろ」
「……?はい……」
(三成くん……家康はともかく、私達の事も気がついてなかったんだ……)
「それならそうと、信長様にちゃんとお伝えして辞退しろ。いくら宴とはいえ、信長様の命を破ったから俺は怒ってるんだ」
「はいはい。次はそうする」
「…………」
「家康」
「はーい……」
「まったく……」
秀吉さんは眉間にシワを寄せて溜息を漏らす。
それなのに2人はあまり動じず受け返す。
(なんか……怒られ慣れてる……?)