第36章 〜36〜
私はメモを取り終えて、ガイドブックを閉じた。
「はい。これ。よろしくね」
「ああ。ありがとう。まかせてしっかり証拠隠滅するから 」
「ふふ、よろしく」
「……じゃあ、もう夜も遅いから俺はそろそろお暇するよ、お茶ご馳走様。」
「あ、うん。ありがとう来てくれて。」
立ち上がる佐助くんを見てお礼を言う。
「そういえば、しばらく安土離れるって言ったよね」
「ああ、お館様に呼ばれて城へ戻るんだ」
「そっか……」
「安土に戻ってきたら、また顔を出すよ」
「うん。待ってるね」
「……もし、その前に俺に何か用事があれば市に行って」
「市?どうして?」
「そこに、幸村がいる。あいつに言ってくれれば俺に通じるから」
「幸村……って……」
「覚えてない?ほら、君と俺が最初にあった時、謙信様と居た……」
「ああ、あの人。幸村って言うんだ……」
「そう。市で流しの行商として潜入捜査してる。」
「へぇ……」
「まあ、仲良くはならなくてもいいけど、何かあれば」
「うん。わかった。ありがとう」
「どういたしまして。じゃあ」
佐助くんは音もなく天井裏に飛び移った。
「気をつけてね」
「ああ。ありがとう。君もね。」
佐助くんはそう言うと、音もなく天井裏に蓋をして消えた。
天井を見上げながらしみじみ思った。
(……現代人から忍者って……やっぱり凄いな……)
佐助くんを見送って、寝間着に着替える。
「……ふぁ……」
(お酒も飲んだし、流石に眠いな……今日も色々あって楽しかったなぁ……)
明日はきっと、優鞠と家康のいい話が聞けるだろうなと想像して微笑んだ。
(家康にサイン頼まなきゃね。サイン……じゃ通じないから名前書いてって言えばいいかな……多分何でって聞かれると思うから……えっと、女中さんに頼まれたーとか言えばいいかな。)
いつもなら不機嫌に突き放されるだろう。
でも、私が助言したことにより2人の距離が縮まれば、多分家康は私のお願いを断れないだろうという自信があった。
(ふふ、明日楽しみだなぁ……)
ひとり微笑みながら布団に入った。