第36章 〜36〜
「あ、あとね」
「なんだい?」
佐助くんが機嫌の良さそうな声で言った。
「歴史……がね。私嫌いじゃないけど詳しくなくて。」
「うん。」
「今日、光秀さんに『俺がした事で後世に残ってることはなんだ』って聞かれて……本能寺の変以外に明智光秀がした事……私知らなくて 」
「……明智光秀か……」
「うん。だから、良ければ明智光秀が……ううん、織田軍の武将達がした歴史上のいい事を教えて欲しくて」
「いい事ね……そうだな……ありすぎて……」
「……だよね」
「……教えるのは構わないけど」
「?」
「それを詳しく彼等に話すのは……」
「あ、ううん。ただ私が興味あるだけなの。光秀さんもそうは言いながらも詳しい歴史は聞くつもり無いみたいだったし」
「へぇ……」
「だから、今度来た時でもいいから教えて欲しいなって」
「わかった。俺なりにまとめておく」
「ふふ、ありがとう」
「……君から見て、明智光秀はどんな人?」
「光秀さん?」
「ああ。俺らは彼の事を裏切り者と学ぶだろう?」
「……そうだね」
「まあ、現代で本能寺の変については色々な犯人像があるけど……」
「うん。それも聞いたことある。一番有力なのは明智光秀だけどって。」
「そう。だから、ただの歴史ファンとして、君が見る明智光秀はどんな人物なのか気になって。」
「うーん、そうだなぁ……。私も最初は警戒してた。本能寺の変の犯人だってイメージが強かったから」
「…………」
「でも、話してみると以外に良い人かもって思う。」
「いい人?」
「うん。掴みきれない、何考えてるかわからない人だけど、ちゃんと人の心を考えてるっていうか……」
「へぇ、意外だな」
「……人のことおちょくって楽しんでるって印象あるけど、それって見方を変えればその相手のこと良く見てるってことかなって思って」
「……そうだね。」
「織田軍の中でも、光秀さんが反逆者だって思ってる人もいるみたいだけど……私はそうは思わない……かな」
「そうか……」
「まあ、そう思いたいって気持ちが大きいんだけどね」
「敵を騙すにはまず身内からって言葉もある。何より今まで君が見た明智光秀が本当だ。」
「うん……そうだね」
「ありがとう、聞かせてくれて」
「ううん。」