第35章 〜35〜
家康が広間を出て少し経った後、光秀さんに呼ばれて隣へと座った。
政宗は家臣達が集まる輪で、楽しそうにしている。
「どうしました?」
「いや、別に用はない」
「……じゃあなんで呼んだんですか」
「いいだろ。それとも俺に酌はしたくないと?」
「そういう訳じゃないですけど……(光秀さんと話す時は何となく身構えるな……)」
私が徳利を持つと、光秀さんが盃を出した。
お酌をすると、光秀さんはにこやかに笑いながら飲み干した。
「……」
「はい?」
「お前、酒は強いのか」
「弱くはないと思います。でも、日本酒は自分と当たり外れがあるんでなんとも言えないですね……」
「ほう……」
「この時代に来た日、信長様と飲んだ日本酒は駄目でした。二日酔いになっちゃって……でも、今日のこの日本酒は大丈夫そうです」
そう言って注がれたお酒を一口飲んだ。
「ほう、なら俺に付き合え」
「ふふ、いいですけど、酔い潰れたらちゃんと介抱してくださいね」
「いいだろう」
ただ飲み続けるのもつまらなく思って、光秀さんに投げかける話題を少し酔い始めた頭で考える。
(酔っ払っても……本能寺の変の事は言わないように気をつけなきゃ……うーん、なるべく歴史に関係なく聞きたいこと……あ。)