第31章 〜31〜
そこで、はっとしてガイドブックをパタンと閉じた。
(このガイドブック……。もしほかの人の目に触れたらやばい……よね……)
ガイドブックには当然この戦国時代の大まかな歴史が書かれている。
(光秀さんが言ってみたいに……自分がいつ死ぬかとか、この先どうなるかとか……知りたくないよね……。それに……)
光秀さんと話した時に言われた、責任という言葉が心に重くのしかかる。
「責任……」
この本が人目に触れることも、信長様を助けた事も、政宗と恋仲になることも、私がこの時代に残ることも。
全てにおいて責任は私にある。
(……今更遅いかもだけど……この本は……処分しよう……。これ以上歴史が変わるのは避けた方がいいよね……でも……私がこの時代に居ることで歴史ってどう変わるのかな……)
破り捨てるより、確実に燃やした方がいいかと思い、とりあえず鞄の奥底にガイドブックを押し込んだ。
(この荷物も……私が死んだ後も残るとしたら……現代で見つかったらどうなるんだろ……スマホとか……絶対戦国時代に無いものがあっちゃまずいよね……まあ……スマホなんてもう持ってても意味無いしな……)
鞄を押し入れの奥に押し込め、祈りをこめて襖を閉めた。
(ゴミを燃やす時……一緒にお願いして燃やしてもらおう。それまで誰にも見つかりませんように……)
もう現代に戻るつもりがないなら、私もけじめをつけた方がいいかもしれない。
それが正しいかどうかはわからないし、しなくてもいいのかもしれないが、自分の過去と、本来あるべきではない、ここにある未来の物と。
その両方と決別すれば、自分の中でなにか変わるんじゃないかと。
そう感じなから私は机に向かい、少しでも早くこの時代に慣れるために勉強を始めた。