第30章 〜30〜
秀吉さんの御殿に着くと、政宗はズカズカと上がり込んでいく。
家臣の人も慣れた様子で、手を繋いで入っていく私たちを笑顔で見送ってくれた。
「ちょ、勝手に入っていいの?」
「いいだろ別に」
「……自由だな」
「ん?何か言ったか?」
「別に?」
政宗が襖を開けると、秀吉さんが呆れながらも出迎えてくれた。
「政宗、人の御殿に入る時は一声かけてからだって言ってるだろ」
「悪い悪い」
全く悪びれる様子も無く政宗は答える。
「ごめんね、秀吉さん」
「まったく。は真似するなよ?」
「ふふ、大丈夫。しないよ」
私が笑って返すと、秀吉さんは優しく笑った。
「で?なんで政宗がいるんだ?お前も来るのか?」
「いや、ここまでを送りに来ただけだ。すぐ戻る。」
「そうか。じゃ、気は進まないけど行くか。」
秀吉さんは私の頭を軽く撫でた。
政宗はそれを見て眉を上げた。
(……まあ、兄弟愛ってのもあながち嘘じゃ無さそうだな。)