第29章 〜29〜
朝餉を終えて、部屋に戻ろうと歩いていると、三成くんに声をかけられた。
「様、おはようございます」
「三成くんおはよう」
(朝から爽やかな笑顔だなぁ)
三成くんの笑顔につられて、私も自然に笑顔で挨拶を返した。
「様、聞きました。信長様から世話役を仰せつかったそうですね」
「あ、そうなの。」
「そこで……早速なのですが一つ頼みたいことがあるのです」
「私に?なにかな?」
「はい。この城にある書庫なのですが……」
「書庫?」
「ええ。今まで忙しすぎてあまり手入れがなされていなくて……空いた時間で宜しいので整理を手伝って頂きたいのです」
「あ、うん。いいよ。」
頼られることが素直に嬉しく、私は三成くんと共に早速書庫へ向かった。
書庫について三成くんが扉を開くと、なかなかに広い部屋に本棚がいくつも壁際に並べられ、真ん中に文机が置かれていた。
だが、どこもかしこも書物や巻物が散乱していた。
「すごい……散らかってるね……」
「少し前まで戦準備で使ったままでしたので……戦の後も色々と慌ただしくてつい後回しにしたいたらこのような事に……」
「そっか……」
「本来は、主に使う私が片付けるべきなので、様にお願いすることではないんですが……」
「三成くんも忙しいもんね。手伝える事なら私なんでもやるから。」
「ありがとうございます。秀吉様には自分でやりますと言ったのですが……」
「……?」
「秀吉様に『お前がやると益々散らかるからやめろ』と言われてしまいまして……」
そういうと三成くんはしゅんと項垂れた。
(ああ、多分あの時のお茶みたいに二度手間になるから秀吉さんが止めたんだな……生活能力が低いのかな……?)
項垂れる三成くんが可愛く見えて少しだけ笑ってしまった。
三成くんは何故が笑っているのか分からず首を傾げて私を見た。
「どうされましたか?」
「ううん、何でもないの。私がやるから大丈夫だよ。」
「お力になれず申し訳ないです……」
「そんなことないよ。どの順番で並べればいいか教えてくれる?」
「はい。わかりました。」
三成くんは輝く笑顔で言った。
(普通の年下の男の子って感じ。家康とは違った可愛さがあるな……)