第27章 〜27〜
まだ早い心音を感じなから、困惑する頭で家康の言葉を聞く。
(嫌なことは……しない……って)
「今物凄い困ってるんだけど……」
「でも嫌じゃないでしょ?」
その通りだった。
さっきまで友達に戻るなんて無理だと告げようと思ってたのに、好きだと言われて、その気持ちが嫌じゃない自分がいた。
それでも引っかかるのは周りの目。
まだそんなことを気にしてしまう自分が嫌だった。
でも家康はそれすらも理解して自分に歩み寄ってくれている。
そんな有難い事が自分にあっていいのだろうか……
そう話を聞きながら考えていると、家康が城へ戻る時には付いてきてほしいと言われ、ぽかんとしながら「女中として?」と口をついて言うと予想していなかった言葉が聞こえて固まってしまった。
「つ……妻?」
(妻って……ちょっと頭が追いつかない……)
困惑して自分でも触らずともして分かるほど赤い顔で家康を見つめると、吹き出すように笑われた。
「ちょっと!人が困ってるのに……」
自分ばかり困ってるのが馬鹿みたいで、つい声を荒らげてしまった。
それすらも家康に飲み込まれてしまってどうすればいいのかわからなくなってしまった。
「家康はずるいよ……そんなこと言われて意識しない訳ないのに……」
「そう?」
家康は満足げな顔で私を見て優しく笑った。
その笑顔を見て胸が高鳴るのを感じた。
そして「またちょくちょく会いに来るから」と言いながら私の頭を軽く撫でて部屋を出ていった。
「……なんなの……」
家康が出ていってからも、しばらくは動けずに座り込んだまま色々考えていた。