第27章 〜27〜
(秀吉様……今朝は本当緊張したなぁ……)
今朝、食事場で隣に座ってた事が嘘みたいに思えて。
別れ際に肩を叩かれて、ドキッとしたのを思い出して顔が熱くなるのが分かった。
(人たらし……なのは知ってたけど。そりゃあんな気軽な雰囲気なら、話しやすいだろうし慕われるのもわかるなぁ……)
縫い物の手を止め、溜息を漏らす。
(は……多分私と秀吉様が恋仲になればいいって思ってるんだろうな……)
の気持ちをお節介だとは思わない。
恋路を応援するのは、友達として当然の行為だろう。
でも、優鞠は応援されても困るとしか思えなかった。
(もし……万が一……秀吉様と恋仲になっても……多分私が駄目すぎてすぐ振られそうだもの。)
優鞠はふっと笑いながら再び手を動かした。
(きっと、私とお付き合いしても秀吉様は周りの女の人達に慕われ続ける。それを黙って見てられるほど私は大人じゃないし……嫉妬してしまうに決まってる…
そもそも、自分から気持ちを伝えるなんて絶対無理。それに……好きだけど……どっちかっていうと感謝の方が大きいから……ほんとに付き合うとか考えられないんだよね……)
自分にとって、秀吉に対する気持ちは恋よりも憧れに近い気持ちだった。
姿を見られるだけで、声を聞けるだけで幸せだった。
もし、またお話が出来るようなことがあったら……
助けてもらった時のお礼をもう1度ちゃんと伝えたかった。
あなたのおかげで、今充実した毎日を過ごせていると。
あの時、私を助けてくれてありがとう、と。
その気持ちが伝えられればそれで良かったのだ。
なので、今持っているこの感情が本当に恋と呼べる気持ちなのか優鞠本人にも分からなかった。