第21章 〜21〜
「そりゃ戦なんて無ければいいし、あっても政宗が生きて帰って来るのを信じて待つしか私には出来ない。」
「あぁ」
「私が戦を収められる訳もないし、戦いに行く政宗を止めることも出来ない」
「あぁ」
「だからって好きって気持ちも抑えなきゃいけないなんて辛いよ。だって、政宗が……死んだら……もし恋人じゃなくても私は絶対泣くもん。」
「……そうだな」
「そんな時代だからこそ……今日みたいな時間を2人で大事にしたい。それじゃ駄目かな……?」
「っ……」
私は泣きそうな顔で政宗を見つめる。
政宗は小さくため息を付いて私を見つめ返した。
「……俺は……国のためなら戦に向かう事を戸惑わない。」
「うん」
「死ぬつもりなんてないが、戦場では何があるかわからねぇ。」
「うん」
「お前を置いて戦場へ行って何日も帰らない事もあるだろう。」
「うん」
「お前が泣いても、いつもそばに居てやれるとは限らない。」
「うん……」
「それでも……俺を好きだと言ってくれるか?」
政宗はこんなにも私との事を考えてくれている。
私は覚悟を決めた。
「うん。政宗が好き。」
そう言ったとほぼ同時に政宗に抱きしめられた。
「……好きだ。」
「うん。私もだよ。」
お互いを抱きしめたまま顔を見合わせる。
「なぁ」
「……ん?」
政宗はそっと私の唇を触る。
「口付けしていいか?」
「……そういう事わざわざ聞かないで……恥ずかしいから……」
「これくらいで恥ずかしがってちゃ、この先大変だぞ?」
「えっ?」
答える間もなく引き寄せられて甘く何度も口付けられる。
「……んっ……」
口付け……キスくらい初めてじゃない。
でも今までしたキスのどれよりも幸せで……でも何処か切なく感じて悲しくなった。
少しでも平和な時間が長く続くようにと、戦がなるべく起きないようにと、願わずにはいられなかった。