第4章 〜4〜
フワッ……
(ん………)
「お、目覚めたか?」
「誰……?」
「その言葉、そっくりお前に返す」
(ですよね…………………って!!!)
先ほどの出来事を思い出して、いてもたってもいられず、ジタバタする。
「お、おい!怪我してるかも知れねーんだから大人しくしろ!」
「……ッ!おろして!」
「だから怪我……」
「大丈夫です!どこも痛くない!はやく!」
「……ったく……」
私を横抱きにしていた男は渋々私を立たせた。
その動作があまりに優しくて少しドキッとしたが、すぐに気になっていることを男に矢継ぎ早に問う。
「……さっきの人は……?」
「あぁ、お前のおかげで命は無事のようだな。礼をいう。」
「うん……で、ここどこ?」
「ここ?本能寺に決まってるだろ。まあ、今燃え滾ってるけどな」
(本能寺……?さっき見たのは石碑しか……)
と、ふと目の前の男の服装を見てまた疑問を投げかける。
「なんで……貴方も向こうの人も……みんな……着物着てるの……?」
「んん?お前頭おかしくなったのか?着物着てなかったら素っ裸じゃねぇーか」
「そういう事じゃなくて…」
そこでありえないひとつの仮説が頭を過ぎる。
だがあまりにありえない話なので、ぶんぶんと頭を振ってその考えを打ち消そうとする。
(……なんだこの女……面白ぇ……。だが、女中では見たことのない顔だ…………そしてこの女の着ている服装は見たことがない……いったい何者なんだ……)
「……ねぇ」
「ん?なんだ?」
(ありえない……でも……私にドッキリを仕掛ける理由がないし、どう見たって目の前のこの人も、助けた変な人も、目の前で燃えてる本能寺も……作り物や演技とは思えない……)
「おい、どうした」
「……今ってさ……何時代……?」
「あぁ?そんな事も知らねぇのか?今は天生10年。それがどうした?」
「天生って……」
「はぁ?」
「そんなの……知らな……あっ!!!」
「……お前本当に大丈夫か?」
(天生って……さっきの石碑に書いてあった……気がする……本能寺の変か起こったのって天生とか書いてなかった……?)
そこでもうほぼ確信は得たものの、それでも信じたくなくて、顔を伏せた。
その時、後ろに集まっていた輪の中から私達の方に1人駆け出してきた。