第12章 〜12〜
「料理人として働き出してからは、お給料もある程度貰えるようになって、生活は何とか人並みに出来るようになったけど、最初は凄い厳しくて。先輩にいつも怒られて、悔しくてよく家に帰ってから泣いてたなぁ」
「泣くほど辛かったんですか……」
「まあ、私が仕事に早く慣れるようにって先輩も心を鬼にして教えてくれてたって、今では分かるんだけどね。その時はそう考える余裕も無くて」
「厳しいけど、いい先輩なんですね」
「うん。今もその人と一緒に働いてたんだけど、今では仲間として認められてるって感じるし、頑張ってきて良かったなって思うよ」
「……様の努力の賜物ですね」
「へへ。そう言ってもらえるとうれしいな」
「ふふ」
二人して顔を見合わせて笑う。
「でもね、今でも友達はほんの数人しかいないの。その子達とも滅多に会わないから、向こうは友達なんて思ってないかもしれないけど」
「そんな……」
「いいの。人付き合いがいつからか苦手になってたし、今でも他人を信じることがすごく怖いの。」
「…………」
「でも、この時代に来ていろんな人に優しくされて……すごい……嬉しかった。例え仕事だとしても、私を気にかけてくれることがなんか嬉しくて。」
私はそういうと妙に照れくさくなった。