第2章 人魚姫【ギャグ】
人魚のお姫様である姫は自分の下半身を見ました。そこに人間のような脚はなく、魚のような尾ひれがあるだけです。彼女はこの尾ひれを憎く思いました。脚があれば、王子に会いに行けるのに。
始まりは船から落ちた王子を姫が助けたことでした。しかし人魚である彼女は名乗り出ることができなかったのです。後から他の女性が現れたので、きっとその人が助けたことになっているのでしょう。
そこで姫はあることを思いつきました。そう、魔法使いに人間にしてもらうのです。しかしその魔法使いは悪名高いことで有名です。けれど他に道はありません。姫は意を決して魔法使いの住む海辺の洞窟に向かいました。
「人間になりたい?」
金髪の間から立派な眉毛が覗く魔法使いは聞き返しました。姫は力強くうなずきます。しかし眉毛……じゃなかったアーサーは視線を逸らして答えました。
「方法がないワケじゃねえ。だが、まだ未完成の魔法だ」
「それでもいい! 早く人間になりた~い!」
どこぞの妖怪人間のような台詞を言って主張する姫。アーサーは折れて魔法をかけてあげることにしました。
「ほあたっ☆」
もくもくと白い煙に包まれて、姫は人間の脚を手に入れました。しかし口をパクパクさせています。何があったのかアーサーが聞いても答えません。
ぴこーんと頭に豆電球がついたアーサーは姫に紙とペンを渡しました。姫はさらさらと文字を書いていきます。
『声が出ない!!』
「マジか!」
『これじゃあ意味が無い。元に戻して!』
「それが……この魔法は酔ってるときに思いついただけだから、わからないんだ」
『はあ?』
アーサーが目を逸らしながら歯切れ悪く答えました。しかしこれでは王子に会えても本当に助けたのが誰なのかを伝えられません。そして元に戻ることもできません。姫はお先真っ暗です。
「いや今意思の疎通しただろ。小型ホワイトボードやるから筆談しろよ。紙と違って何回も書き直せるぞ」
『そういう問題じゃない!』
「まあとりあえず当たって砕けて来いよ。元に戻る方法はそれからでも遅くないぜ?」
『砕ける前提で言うな!』