Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第17章 ★両片想い、実を結ぶ。:白布
小動物か何かだと思った。
バレーの世界では小さい部類に入る俺。その俺を、必死になって見上げてくるのだ。ボトルを抱え、カゴを抱え、体育館を縦横に走り回るその姿は、さながらモルモットかハムスターのようだ。
そのモルハム―――天草星菜は、ほんの2週間前に五色が連れてきた。5月に差し掛かった今日この頃まで所属する部活に悩んでいて、バレー部のマネージャーを快く引き受けた。らしい。
155㎝に満たない天草は、人懐っこい性格と小ぢんまりしたそのサイズが相まってか、あっという間にバレー部に馴染んだ。
『白布先輩!』
「何?」
モルハム…じゃない、天草が駆け寄ってくる。その手には救急箱を下げている。
『テーピング、交換しましょうか?』
「え?」
自分の両手に目を落とし、若干少し驚く。右手の人差し指と中指、そのテーピングが取れかけていた。俺は指摘されるまで気付かなかったのに、このモルハムは気付いたのか。
なんか、ムカつく。
『どうかしました?』
「いや、別に。テープ、ちょーだい」
『やりますよ?』
「いいよ。自分でやる」
『でも右手に巻くんでしょう?それならわたしがやりますよ!』
俺の肩をぐっと押し、床に座らせる。そして箱からテープを取り出し、俺の手に元々巻いてあったのを丁寧に取り始める。一度指を濡らしたタオルで拭き、天草の私物らしいハンカチで水気を取った。
くるくると白いテープが指を覆っていく。『終わりましたよ!』とモルハムが笑い、道具を仕舞う。絶対自分でやった方が良い…そんな俺の考えは、すぐに消えた。
「わ、すげ……」
手を握ったり開いたりする。硬すぎず、かと言って緩すぎるわけじゃない、テープから加わる絶妙な力加減。自分でやってもたまに巻き直すのに、このモルハム、たかがマネージャーは完璧にやってのけたのだ。
『あ、キツい、ですか?』
「いや。ちょうど良い」
『よかった!』
にかっと笑うモルハム。その笑顔はどこか誇らしげにも見える。
「練習戻るわ」
『はい!何かあったら言ってくださいね!』
ペコリと一礼し、去っていく天草。先入観から見下していた俺はなんとなく罪悪感があって、素直に例を言うことはできなかった。