Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第16章 ★嫉妬心:瀬見
事後処理を終え、ジャージを整えた上で器具室を後にした……臭いが気になるので、ドアは全開で。それから体育館に戻ると、サアァァァと雨の屋根を打つ音が響いていた。
『わー、降ってきたね』
「土砂降りだな。ちょっと待つか」
ごろん、と床に寝っ転がる。冷えた床が、気持ちいい。大の字になってると、いそいそと天草が隣に寝転び、腕に頭を載せてきた。俗に言う、腕枕。
『重たくない?』
「おう」
雨の音と、互いの息遣いだけが聞こえる。『ねぇ』と呼ばれたので天草を向くと、にまりと笑う。
『英太』
「っ///」
びくっとして、起き上がる。ゴッ、と鈍い音がして天草の後頭部が床に打ち付けられた。
『いっだぁ!?』
「なっ、急に言うからだろっ!」
やっべぇ、心臓うるせえぇ…なんてだよ。クソ、ヤッてる最中でもこんなんならねぇのに。そんな俺の心を見抜いてか、天草はにこりと笑う。
『英太は私のこと名前で呼ばないよね?』
「や、その、それは……」
『イキそうな時は名前で呼んでるのに』
「おまっそれ、自覚あったのかよ!?」
『うん』
「タチ悪いな!?」
ホント、タチ悪ぃ。計算してるとか、腹立つ。それにどぎまぎしてる俺に、もっと腹立つ。
「だいたい、なんで名前だよ」
『んー、結婚とかで名字は変わるけど、名前は一生じゃない?大切なもの、って感じがする』
うわ、ちゃんと理由あった。なんとなく、だと思ってたのに。むくりと起き上がった天草は、じぃっと俺を見てくる。"名前で呼んで"とデカデカと書かれているような、そんな顔をしている。
くそ。
「………星菜」
『……………ぇ………え、えぇっ!?』
「呼べって顔してたのそっちだろ!?」
『いや、言ってくれると思わなくて……///』
どうしよう、死ねる。顔を両手で覆って、愛しい彼女は呟いた。もしかしたら、これ使えるかも。
「星菜、星菜〜!」
『や、やだあぁぁぁあ!』
耳まで真っ赤になって照れる天草。面白いからしばらくからかってやろう、と笑うと、天草が『調子に乗るな!』とデコピンしてきた。
翌日から、名前で呼び合うようになったのは、また別のお話。
The End.