Volleyball Boys 2《ハイキュー!!》
第2章 立場違えど想いは1つ:京谷
【天草 side】
いつからだろうか。自分を取り巻く環境が少し特殊だということに気付いたのは。
幼稚園から小中と、友達と遊んだ記憶なんてものは無い。勿論、通学路を友達と歩いた記憶なんてものも、無い。
ただ、一人だけ、ずっと隣にいてくれた。
1つ年上の賢太郎。その人だけは、いつでもどこでも一緒だった。
彼にふと、訊いてみたことがある。あれはたしか、私の10歳の誕生日の事だ。
『ねぇ賢太郎、賢太郎はどうしてここにいるの?まだ11さいだよね?』
むっ、と眉間にシワを寄せた賢太郎。それから拙いながらも教えてくれた。
「オレのとーちゃんが星菜の親父さんに世話になってたんだ。とーちゃんが死んだ時にお前の親父さんがオレを引き取ってくれたんだ。その時約束したんだよ」
"星菜の傍に、ずっといる"って。
その言葉に、私はパァッと顔を輝かせた。
『ずっと?ずっと一緒なの?』
「オレが死ぬのは、お前が死ぬ時だ」
『じゃあ私、ずぅっと死なない!』
にかっと笑う私の頭を、賢太郎はちょんと小突いた。うー、と目に涙を溜めた私を、賢太郎はからからと笑った。
「そんなんじゃすぐ死んじまう。この世界は物騒だって、とーちゃんが言ってたからな」
『ぶっそうって、なぁに?』
「ケンカとか、争いがいっぱいってこと。いつ死ぬか分からない。すげぇ危ないんだ」
『じゃあ、私すぐ死んじゃうね…』
しゅん、と方を落とす私の頭を、今度は優しく撫でる賢太郎。それから力強く、ハッキリとした声音で言った。
「大丈夫だ、何があってもオレが守る」
『ほんと?ほんとにほんと!?』
「ああ。ブシに二言はないからな」
『ブシって、なぁに?』
「サムライの事だ。オレのじーちゃんのじーちゃんのじーちゃんはブシだったんだぜ!」
『へえぇ!』
よく分からなかったけど、賢太郎がそう言うのなら、ブシとはきっとスゴいものなのだろう、と幼い私は思っていた。
「お前もやってるんだろ、剣道」
『うん』
「なら、一緒に特訓しよう。そして、裏社会で一番強くなってやるんだ!」
『うんっ!賢太郎、ずっと一緒にいようね』
「ああ。ずっと、隣にいてやるぞ」
そうして、顔を見合わせてにっと笑った。