第2章 契
初仕事の屯所内にある全ての厠掃除を終えたのは、
昼前だった。
みわ
「………疲れた…」
思わず女中棟の廊下にへたり込んだ
イボ
「まあまあじゃな……」
みわ
「!!」
へたり込んだ私の後ろにイボさんが立っていた。
イボ
「あんたが掃除した厠ひとつひとつ見回ったんじゃが、
まあまあじゃった…」
(喜んで良いのかな?)
みわ
「……ありがとうございます…」
イボ
「疲れたじゃろ…昼餉でも食べてくるといい。
食堂は隊士さんらと一緒だて。」
みわ
「はい……イボさんはもう召し上がられたんですか?」
イボ
「ワシは婆だから食堂の食べ物は好かんから、
ちょいと外で食べてくるだて。」
みわ
「そうですか…お気をつけて。」
イボ
「午後からはキッツイ床磨きだで、
覚悟しときな。」
みわ
「…は、はい。」
そういうと、
イボさんは腰を曲げながら立ち去った。