第12章 暗躍する者嫌う者
「お待たせしました」
15分程経って、リョンヤン王子が戸に向かって歩いてきたとき、ハヨンは呆気に取られた。
「お、王子?その書物の量では歩くのは大変ではないですか?」
書物が重い訳ではない。どれも巻物なので、軽いのだが、丸めた巻物を潰さずにすべてを抱えて持っていくことに少々無理があると思うのだ。
「それはそうですが、これを全部小分けにして運んだら、私の執務の時間が無くなってしまいます。」
リョンヤン王子は卓上に置いてある大量の巻物をため息をつきながら眺めた。
「手伝いたいのですが私はリョンヤン王子を護衛する身です。何かで手が塞がるととっさの時に間に合いません。」
うーん、とリョンヤン王子が思案していると、入り口を誰かが稲妻のように素早く横切った。
人並みではない速さなのでハヨンは思わず身構える。
しかしリョンヤン王子は臆せずに書庫を飛び出して、
「リョンヘ!急いでるところ悪いんだけど、手伝ってはくれないか!」
と大きな声で呼び掛けた。
(いつもの話し方と違う…!)
ハヨンは、リョンヤン王子が呼び掛けている相手が、ただ者でないことを悟る。
「いいけど、後で城を抜け出すとき、手助けしてくれるか?」
と何やら取引をする声がした。
(え、まさか…。)
ハヨンにはその声がいやと言うほど聞き覚えのあるものだった。
(ううん、そんなはずないだってあなたは…。)
ハヨンはその人物が近づいてくる足音が聞こえる度に緊張を高まらせていった。