第11章 専属護衛
午前4時。ハヨンはいつも通りの時間に目覚めた。
食事や朝の訓練の前に、自主練習をするためだ。
そしていつもの通り中庭を通ってぐるっと城内を1周するために走り始める。
(今日からリョンヤン王子の専属護衛か…。実感がわかない…。)
専属護衛と言えど、王以外の王族は大抵二人は専属護衛がいる。ハヨンは新人の上、もともとリョンヤン王子には二人の専属護衛がついていたので、三人目である。
今日一日の予定を確認しながら走っていると、後ろから誰かが走っている足音がした。
「誰だ!」
警戒して振り返ると、悪戯っぽい笑みを浮かべたリョンだった。
「久しぶりだな、ハヨン。相変わらずあんたは俺のことを侵入者扱いするんだな?」
「…怪しい動きをするあんたが悪いのよ。それにしても新しい恋人でもできたの?この前から全然姿を見てなかったのは、恋人にふられたからと思っていたけど。」
もしかすると何か怪しいことをしていたのかもしれない。少し困らせてやろうと尋ねるが、リョンは顔色一つ変えなかった。
「ちがうちがう。ある地方の領主様に招待されてね。そこで俺の演奏を披露していたのさ。」
そのうえ喋り終えた後のこの羨ましいだろう?といった表情に、私は尋問に向いていないのかな、とハヨンは自信をなくす。
「それにしても俺がいない間にあんた、大活躍だったらしいな。俺の耳にも届いた。」
「相変わらず耳が速いのね。」
「そりゃそうさ。俺の手にかかれば誰だってペラペラと話してしまうんだからな。」
とハヨンが気にしていたことをついてくるようなことを言ってくるので、ハヨンは彼を1発殴ってもいいだろうか、と暴力的な考えがちらとよぎった。