第6章 城での生活
「あ、来た来た。ハヨンさんこっちです。」
城の門の脇に立っていたハイルが、城に向かってくるハヨンひらりと手を振る。
「あの、えと、これはどういう…。」
わざわざ迎えが来るとは思っていなかったので、戸惑うハヨンにさぁ、ついてきてくださいとハイルは先を歩きだした。
その上足を進める先は兵士の寮ではなく、女官や役人の寮の方向だ。
「男ばかりの寮で一人だけ女では何かと不便かと思い、女官達と同じ館なのですが、構いませんか?」
ハヨンの疑問を感じ取ったらしいハイルは部下のハヨンに向けて相変わらず丁寧な口調で尋ねてきた。
「はい、助かります。」
風呂や着替えでわざわざ一人の女のために場所を用意するのは費用がかかるからだろう。風呂の時間をずらすとか、着替えの場所を提供してもらえるよう頼もう等と考えていたハヨンにはありがたい処置だ。
「あと、あなたの教育担当は俺なので、何かあれば遠慮なく言ってください」
「はい。」
そのとき、きゃあと色めきたった声が聞こえてきた。そしておおきくなるざわめき。あきらかに女性のものだ。
(これはいったい…。)
ハヨンの疑問は女官の寮に足を踏み入れて解決した。
上官の特権で男子禁制の館に入ってきたハイルを見て、女官達が興奮しているのだ。
「すみません、通してくださいね。」
女官達ににこやかに対応し、廊下に出てきた女官の人混みを颯爽と歩いていくハイルはどうやらこういうことになれているらしい。
ハヨンのハイルに対する印象が丁寧な人から女馴れしている人に変わった瞬間だった。