第22章 共に結びし物
「世話になったな。」
リョンヘ一行が淬の国を発つ日。朝焼けの余韻が残る空の下、リョンヘは一行の先頭に立ち、そうヨンホに告げた。
「私の方こそ様々な意見を交わすことができて貴重な時間だった」
ヨンホも相変わらず固い口調だったが、彼の表情には笑みが見てとれた。
「では次は戦のときに」
多分燐と淬に面するあの国は遠からず戦を仕掛けるだろう。それをみな察しているからヨンホは口にしたのだ。
「ああ、では。」
リョンヘは輿に向かって歩き出し、ハヨンはリョンヘが輿に乗るのを手伝ったあと側に控えている馬に乗る。
静かに一行は動き出した。城の前の大通りをゆっくりと進んでいく。開けた視界の先に、曇った空が見える。
先程までは晴れていたのに急に天候が変わったのだ。
「こりゃ、一雨きそうだな」
一行の中の誰かのぼやきが聞こえた。
「一雨どころじゃないだろう、大雨に違いない。燐の国は晴れているといいのだが。」
と囁き返す声も聞こえる。
ハヨンの耳にも何やら遠雷の音が届いた。怪しくなる雲行きを見ながら、なぜこんなにも胸騒ぎがするのかハヨンにはわからなかった。
(なんだろう、でも城に入ってから私の嫌な予感は外れたことがない…)
不安を抱えながらもまさかハヨン達はこんなにも早く事態が急変するだなんてこの頃は思いもしなかったのだ。
続く