第1章 剣士への1歩
まだ雪も残る寒空の下、城の朱雀門には軍へ入隊する試験を受けに来たものがちらほらと現れ始めた。
(こいつらの内何人が受かるのだろう。)
昨年厳しい試験を無事に乗り越え入隊した門番のウンソクは白い息を吐きながら彼らと昔の自分を重ねる。
試験はかなり厳しいし、もし仮に合格しても割り当てられる仕事はよっぽどの能力がなければ最初は大した役割を貰えない。
(この世は生きにくいものだな。)
「すみません。」
同じく試験を受けに来た者だろうか。笠を目深に被った姿は男か女かよくわからない、不思議な雰囲気を纏っていた。
「何だ。」
「白虎はどこに行けば良いでしょうか。」
白虎とは王族の専属護衛をする特殊な部隊で、毎年試験は行うが、受けるものの殆どが不合格になる。つまりは最難関の部隊と言えよう。
この試験では白虎、朱雀、青龍、玄武の4つの部隊で受け付けており、白虎は王族専属護衛、朱雀は戦での最強戦力を誇る騎馬隊、青龍は歩兵隊、玄武は遠距離からの攻撃や籠城した時などの守り全般を行う部隊だ。
この者が合格するのだろうか。ウンソクには白虎にいる兵に比べて余りにも線が細いように感じる。
「この門をくぐって左側の建物の前に白い鎧を来た者が立っている。その建物の中が白虎の試験の間だ。」
そんな私情を挟んでもどうしようもないので、ウンソクは淡々と答えた。
「ありがとう。」
そう言って門をくぐろうとする姿を見て、ウンソクははっとする。
笠の下は疑いようもなくうら若い娘の顔だった。