第21章 城を離れて向かうのは
「おはようございます、リョンヤン様。失礼してもよいですか?」
「構いませんよ」
朝礼が終わってすぐさまリョンヤンの執務室に向かったハヨンは失礼します、といって部屋に入る。するとなぜかその場にはリョンヘもおり、ハヨンはたじろぐ。
リョンヘも多少目を見開いていたが、すぐさま冷静な表情に戻った。
(王子の時のリョンヘ様はどうも冷静すぎて…失礼だけど、私としては面白くない。)
ハヨンには何だかそっけなくされているように感じるのだ。なぜかこちらの姿でももう少し仲良くなりたいという気持ちが以前からもたげてくるのだが、城の人に怪しまれるので我慢してきた。
(それに、公私もわきまえないとね。)
そう考えてもやはり面白くないのはなぜだろうか。
「二人揃ったのでお話しますね。私は二人にとても大事な頼みがあるのです。先ほどリョンヘにはヨンホ王子との話を伝えたのですが、もしよろしければリョンヘは父上の使者として、ハヨンはその護衛として滓の国に同盟を結びに行ってはくれないでしょうか」
リョンヘに専属の護衛がいないのは有名だ。それでもそれほど追及するものはいなかった。何故なら彼の武術に天賦の才能と言えるほど長けているのと、リョンヘを落ちこぼれと見なして特に気にしていなかったからもあるだろう。
(でも何で私…?特にリョンヤン様の前でろくに言葉を交わしたことも無いのに。)
せめてあの鬱陶しい貴族を追い払った時ぐらいだ。
それは彼も同じだったらしく、何やら妙な表情をしている。
リョンヤンはそんな二人を見て優しく笑った。
「何でかと思っているようですが、ちゃんと理由はありますよ。」