第3章 遠き日の思い出
試験の結果の報告を待つ母と師匠のヨウのもとへと帰る道すがら、ハヨンはヘウォンに言われたことを思い返していた。
「よく見たらお前…。異国の血が混じっているのか。」
ヘウォンの問いに苦笑いしたハヨンはどうやらその事をよく尋ねられるらしい。
「いや、私はれっきとした燐の者ですよ。父も母も異国の血は一滴も混じっておりません。何故なのかはわからぬのですが、生まれつき私は赤い目をしているのです。」
そう、ハヨンの目は赤く燃え立つ炎のような色をしていたのだ。
生まれたとき周りから災いを招くと疎まれたり、珍しいので見世物小屋に売ろうと誘拐されそうになったことがあった。
それでもハヨンがこの目を疎ましく思わないのは、母のチャンヒのおかげだろう。チャンヒはいつも、「貴方の目は神聖な色なのよ。王国の旗や宮殿に使われている赤色と同じだもの。貴方はきっとこの国の守り神に祝福されて産まれてきたんだわ。」と
(そういえば私が剣士を志したのも、この赤い目が引き合わせた運命なのかも知れない…。)
今までのことを思い返し終えて、ハヨンはそんな考えが頭に浮かんだ。
ハヨンが剣士を志したきっかけは今から一昔ほど前に遡る。