第18章 里帰り
(なんだかんだで忙しい一日だったなぁ。)
ハヨンはリョンと別れた後、一人故郷への道を歩きながら今までのことをふりかえる。
男を兵士に引き渡した後、素性がばれたくなかった二人はそっと町を抜け出したのだ。
リョンは先ほどの町の兵士達が大して仕事をしていなかったことに激怒し、城に帰って即刻会議を開いて、他にも人身売買を行っている町がないか立ち入り調査や、駐屯地の兵士の入れ替えを要請するつもりらしい。
それにしてもリョンにいろいろと巻き込まれたのでハヨンは当初の予定よりだいぶん遅れている。
(家につくのは今日の真夜中かな。)
いっそのこと走るか、と思ったがせっかくの休日にこれ以上走るのはごめんだと思い直す。
すると後ろから荷馬車の近づいてくる音がした。
(農民が町から帰ってきているのか)
そう考えながら歩いているとなんとその荷馬車がハヨンの真横に停まる。
「ヨウさん!」
見上げると見知った顔だったのでハヨンは思わず叫ぶ。日焼けした顔のヨウは薄暗くなった空の下だと白い歯がやたらと光って見えた。
「帰ってくると聞いたから迎えに行ったのに、どこにもお前を見かけないんで焦ったよ。どこに行っていたんだ?」
そう言いながらヨウは荷馬車の座席にハヨンが座れるように少し席を詰め、ほら乗った乗った、とハヨンに手を差しのべる。
礼を言ってヨウの手を掴んだハヨンは、荷馬車に乗ってから答えた。
「友達と最近怪しい動きを見せてる町に行ったの。人身売買が行われてるかもしれないから、調査がてらに。」
「その友達ってのは仕事仲間か?」
「ええ、ああうん。まぁね」
ハヨンの曖昧な答えにヨウは眉間の間に深くしわを作った。