第17章 褒美
ハヨンはその男の手首を持ち、男の体を反転させた。
男はそのまま背中を強く打ち付ける。叫び声をあげてから起き上がれない様子を見ると、少し打ち所が悪かったらしい。
ハヨンは捕まっていた人を解いた時に出た縄を持ってきていたので、男を縛りあげる。
「私は彼をこの町に駐屯している兵士に引き渡してくる。」
リョンが駐屯地に行けば、彼がお忍びで来ていることがばれるからだ。
「わかった、助かるよ。でもこいつを運ぶのは俺に任せて。さすがにあんたより背の高い男を担がせるのは気が引ける。」
「ありがとう。私も引きずって行こうかと思っていたから。」
そ、それはだいぶん拷問だな。とリョンは少し笑みをひきつらせた
リョンは男を俵担ぎにして歩き始めた。
「どうやら悪事を働いていたやつらのほとんどがあの店にいたようだな。」
「うん。すみません。今から兵士を呼んで来ますので、それまで店の中のやつらが逃げ出さないように見張って貰えませんか。みんな怪我してろくに動けないので、襲ってきません。それに危なかったら逃げてもらって構わないので」
と店の騒ぎを家の窓からこっそりと伺っていた町の人々に声をかける。
「わかった。あなたに助けてもらったし、ここは任せて。」
とさっき店を抜け出した少女でも年上の者が答えると、何人か男も手を貸すとやって来る。
「ありがとう。」
ハヨンはリョンと歩きだした。
「それにしてもやつを一瞬にしてひっくり返したあれはなんだ?」
リョンはハヨンに苦笑いしながら尋ねる。
「あんなやつされたら俺もひとたまりもないな。」
夕焼けを見て、さっきの喧騒とは大違いのために少し穏やかな気分になりながらハヨンは答えた。
「あれは異国の武術なの。私の師匠が異国の人でね。面白い技をいろいろ教えてくださったの。」
「一回その人にもあってみたいな。」
どうやらリョンは根っからの武道好きらしい。そのあともどう手首をひねれば、とかどう重心を移せばなどとハヨンに尋ねてくるのだった。