第16章 深まる謎
「ハヨン、昨日はお手柄でしたね。」
ハヨンは朝、リョンヤンに笑顔で出迎えられた。ハヨンは慌てて首を振る。
「いえ、白虎の隊員として当然のことをしたまでです。リョンヤン様や陛下達におけががなくて良かった。私はその事に一番誇らしく、嬉しく思っております。」
暗殺者の力は人間のものではないように感じた。たとえ剣を極めた者でも、傷を負うことの方があり得るとハヨンは思う。
ハヨンにとって大切な主であるリョンヤンや、友人のリョンヘが怪我をしなかったことがほっとしたことの一つだった。
「それにしても妙な暗殺者でした。あなたはまだ知らされていないでしょうが、あの人は目が覚めたときに宴会でのことを綺麗さっぱり忘れていたようなんです。」
「えっ、それは本当ですか。」
眉をひそめるリョンヤンの顔を見て、それが事実なのだとハヨンは悟る。でも思わず訪ねずにはいられなかったのだ。
「その上、自分の主に対する忠誠心はあつく、自分がしたことを聞かされたときは呆然としていたそうです。まぁ、それが演技なのかどうかは私たちにはわからないのですが。」
今回の事件はどんどんと迷宮入りを深めているようで、ハヨン事態の難しさにため息をつきそうになる。
「ところであの貴族の方はどうなったのですか。」
ハヨンはずっと従者が気になっていたので、すっかり忘れていた貴族のことを思い出す。
「ああ、彼ですか。彼はどうやら今回のことに関わりがなかったようですが、彼は結果としてあの暗殺者をつれてきてしまい、暗殺の手伝いをしてしまったことになるので、隠居という形をとってもらうこととなりました。」
つまりは彼は家臣の座から追い出されたようなものだ。しかしお家をとりつぶすなどとはなっていないだけ十分ましと言えるのだった。