第1章 剣士への1歩
「じょ、女性だと⁉」
ヘウォンは思わずハヨンの頭から足下まで穴があくほど見てしまう。
こうなることを予測していたからか、ハヨンはそのことをさほど気にしていない様子だ。
「確かに、女性と言われればそう見える。」
混乱しているからか、女性に向ける言葉としてはかなり失礼な言葉をヘウォンは呟いた。
ハヨンは豊満な体型でもなく、背も高い。そして、男ものの服を着ていたから間違えられても仕方はなかった。
「ヘウォンさんが鈍いのは知ってたんですけど、これはもう、鈍いどころでは無いですね。こんなんだから女性にモテないんですよ。」
ハイルはなおもおかしそうに肩を揺らしながら笑っていた。
「何人もの女と浮き名を流しているお前には言われたくないな!」
ヘウォンは面白くないといった顔だ。
「申し訳ございません。入隊試験ではある程度激しい運動をするだろうと見こんで男物の服を着てきたのです。それと女であると申しあげた方がよろしかったのでしょうか」
ハヨンの言葉に、ハイルは頭を振る。
「いやいや、そんな身分を名乗るたびに女です、なんてつけるものではないものだし、それはしょうがないことだ。ただ問題があるとすればヘウォンさんの見る目のなさでしょ。」
「お前なぁ、もう少しましな言い方をしてはくれないか。」
ハイルという男は、どうやらヘウォンに軽口を叩けるような間柄のようだ。年の差はそれなりにありそうだが、それだけ信頼している関係なのだろう。