第1章 プロローグ
スルスルと、布と肌がこすれる音が暗闇に響く。
もう何度なく聞いたその音。
サトミには、その音だけで、今マキがどんな動きをしているのかが、見ているようにわかる。
自分よりも女らしい、やわかな脂肪につつまれ、胸とおしりのぷっくりとしたマキのカラダが、今どんな曲線を描いているのか……。
どんな表情で自分を見つめ、瞳の中に自分の姿がどんな風に映り込んでいるのかさえ。
サトミには、カメラで撮影された動画を見るようにわかる。
それでも、毎度、マキの体を自分の目にうつしたいという欲求にかられる。
ほんの小さな光でいい。
ぼんやりとしたろうそくの火でもいい。
光と影とコントラストが、きっとマキの体を妖艶に映し出すに違いない。
今、自分の上に四つん這いになっているマキの体。掌におさまりきらないほど大きな乳房がフルフルと揺れながら、自分の身体にゆっくりと降りてくる。そして、サトミの乳首とマキの乳首が甘い口づけをするかのようにふれあい、しっとりと乳房が押し付け合う。
そんな様子も、さぞ美しく見る事ができるに違いない。
でも……。
それは決して許されない。
この世でもっとも美しく照らし出されるその光景も、破滅の光になることを、サトミもマキもわかっている。
女と女が愛し合うことは、決して許されないこの国においては。