第13章 二人の運命
むかし、あるところに一人の女が居ました。
その女は見目麗しく"天女"と呼ばれていたそうです。
ある時、女は男に逢います。
男は、"海王"と呼ばれていました。海王は、人間との間に産まれ周りからは邪険に扱われ、石などを投げつけられ体に傷を負っていました。
それを見た天女は海王の傷を治すようになったのです。最初こそ、天女に疑いの眼差しを向け警戒していた海王でしたが、次第に天女に心を許していき、"ある感情"が海王の中に現れるのです。
それは、人間の部分がある海王だけ。その為、海王はその感情が何かを知る由もありません。誰にも、もちろん天女にも…その感情を聞けずに心の中に必死で隠しました。
しばらくして、ある事件が起こります。
社にあった禁断の果実が盗まれたのです。その疑いが海王にかけられ、追放されました。天女は、何度も他の仲間に違う、海王はそんなことをしない、と話しました。しかし、異端な存在の海王を誰も信じてはくれませんでした。
天女は悲しみに暮れ毎日、真珠のような涙を流し続けました。
しばらくして、禁断の果実は見つかりました。持っていたのは、仲間の1人でした。ですが、誰も海王のことを連れ戻そうとはしません。これは、すべて仲間が仕組んだ事だったのです。それに気がついた天女は、海王を助けることが出来なかった悔しさに再び涙を流しました。
そして、思ったのです。
"アレがあるから、海王が追放された。なら、アレを食べたら追放される?"
普通ならば考えないことも、その時の天女は不安定な思考で思ってしまったのです。
そして、ある晩。
社に忍び込み、果実を手にとりました。そして、口に運んだ果実は天女から無垢な心を奪ってしまい、果実を食べたことによって、海王を想う気持ちが何かを知ってしまった。
次の日、果実がなくなった事に大騒ぎとなった。天女は、すぐに名乗り出た。
結果、天女も追放となったが…
その後の二人を知る者は居ない。
はずであった。