第9章 苛立ちと時間
ピス『ねぇ、紫水ちゃん?』
「何?」
ピス『長く生きるのって…どうな感じ?』
「聞いて、どうするの?」
慰めや興味で、そんなこと聞いてほしくない。長く生きてきた事を一言で説明するなんて、かなり難しい…
あえて言うなら…
ピス『話したくないなら、いいよ』
そこまで、言っておいて…
「孤独」
ピス『……え?』
「誰一人、自分と同じ時を生きることが出来ない。大切な人の最後を看取る。孤独感。一言で言うなら、その言葉」
ピス『楽しい事とかは?』
「感情ってね、楽しい事とかより辛い事の方が記憶に残りやすいの。楽しい時間は、あっという間に過ぎてしまう。でも、辛い時間は長く感じてしまうのよ」
ピス『確かに、そうかも…』
「貴女達は、これからたくさん経験していくのよ。若い頃は、まだまだ楽しい事があるから、いっぱい青春しなさい」
ふと、空を見上げる。
これからの出来事を予期するような、黒い雲がこちらに向かって伸びてきていた。
「嵐が、来そう」