第6章 ‐5‐
「うぇええええん、にーちゃんのばかぁあ!」
朝からガンガンするなぁ…、
リビングに入ると泣き叫ぶヒナタくんと
ムスっと不機嫌のカオルくん。
どうやら兄弟喧嘩のようだ。
「うるさいな、ヒナタが悪いんだよ!」
「…なっんでよぉ……」
「ちょっとカオルくん!
ヒナタくん泣かせたらダメでしょ!!」
詩乃は俺の手を離し、
2人の元へ駆け寄る。
カオルくんは「やべ、詩乃じゃん…」と
焦った表情で呟いた。
「にーちゃんが…、
しーちゃんにベタベタし過ぎだって…
気持ち悪いからやめろってぇっ…!」
うぇええええん、と詩乃に抱きつく。
詩乃は「やれやれ、またか…」という
顔をしながら頭を撫でる。
カオルくんも気まずそうに、
キョロキョロあたふたしている。
「カオルくん、お兄ちゃんでしょ
仲良くしなくちゃダメじゃない。
それにヤキモキなら素直に言いなよ?」
「…ばっ!///
違うよ!!なんでヤキモキなんかっ…///」
ふふふと笑う詩乃。
なんだか急に罪悪感が湧いてきた。
今までの行いに対して。
もっと気まずくさせてたんだな…
「あっ、あーちゃん!」
俺に気づいたカオルくんが
キラキラさせながら抱きついて来た。
よしよし、と撫でてやると
嬉しそうに「ふへへ」と笑った。
「カオルくんはお兄ちゃんにだけ
懐いてるんだよねぇ。」
「あーちゃん大好きだもんっ!」
ギューッと強く抱きしめるもんだから、
痛くて息苦しい。
お兄ちゃんでしょ、って言葉の重み。
俺には分かるんだよね。
だからこそ
「ヒナタくんとは仲良くしないと。
せっかくここに来たんだから」
「…はぁい」
仕方ないなあとばかりに返事する。