第6章 ‐5‐
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あのね、夜になるとね、
お父さんとお母さんが僕の前に現れるんだ
恨めしそうに僕を見て、
それから詩乃の方に視線を移すんだ
スヤスヤ眠る詩乃に向けて、
『…一緒に……ずっと…』
そう言うんだ。
僕は怖くて詩乃に抱きついて、
『連れて行かないで』って叫んだよ
そしたらお母さんとお父さんは
悲しそうに消えたんだ。
『お兄ちゃん…?』
『詩乃はお兄ちゃんが守ってやるから』
お願い、連れて行かないで
僕にはもう詩乃しか居ないんだ。
流れ出した血、ズタズタの傷。
『…ふふ、どぉしたの?』
『なんでもないよ、おやすみ。』
ねえ。
僕は間違っていたのかな。
目の前に居る詩乃は、
もう僕だけの家族じゃないんだ。
まるで連れて行かれたみたいに。
『ほら見ろ、だから父さん達が…』
お願いだよ。
もう、僕を一人にしないでくれよ。