第4章 ‐3‐
『詩乃ちゃん、あっくん大丈夫?』
『うーうん、でもお兄ちゃんには私しか居ないから。私が大丈夫にならなきゃダメなの』
『早く、元気にならないとね...』
とある施設で出会った女の子と男の子。
やせ細っていて、引きつった笑みを浮かべる女の子、詩乃。
右眼に眼帯をしている優しい男の子。
2人にはそれぞれの傷があった。
確かに2人は分かちあっていた。
だからこそ、お互いの境界線上を超えることはしなかった。
孤独と言う名の、束縛が詩乃の心を支配していたのは恐らくこの頃からだろう。
『お兄ちゃんには、私しか居ないから。』
私が、大丈夫にならなきゃ。
私が頑張らなきゃ、お兄ちゃんは...