第1章 プロローグ
『可哀想...、まだあんなに幼いのに....』
『犯人がまだ見つからないだなんて...』
『施設に預けられるんですって』
『なんでも親戚の人達と縁を切ってたらしいわよ』
両親が通り魔に殺された。
犯人は捕まっていない。
「...ま、まぁ....ぱっ...ぱ....」
もう優しい声で話しかけてくれない。
明るい笑顔で笑いかけてはくれない。
私に残ったのは、たった一人の兄だけだった。
「詩乃」
「にいちゃ....?」
「詩乃は、兄ちゃんが絶対に守ってやるからな」
2つ上のお兄ちゃんの目には、涙が浮かんでた。
でも必死に流さないようにしてた。
「うんっ....」
強く握られた手に、もっと力が加えられた。