第5章 TRAP
【翔side】
潤にバレた。
かなり前から、何かの拍子に気が付いて、探ってたんだ。
どうしよう....
雅紀にバラされる前に、俺から話してしまえばいいのかも....でも...
頭の中に、雅紀の悲しむ顔が浮かんできた。
どうすれば....
松潤は、俺が欲しいって...
ならば...
「今週の金曜日、家に来て」
そう言うと、
「月曜日じゃなくてもいいの??」
って、嬉々とした表情で食いついてきた。
「いいんだ...じゃ、金曜に。」
俺はそう言うと、伝票を持って立ち上がった。
「ごちそうさまぁ〜♪」
手を振る松潤を振り返ることなく、俺はバーを後にした。
....俺と智くんの間に混ぜろだって?
冗談も休み休み言ってくれ。
そんなことが、できるわけないだろう。
俺と智くんの月曜日に、あいつを入れるなんて、考えたくもない。
.....松潤の狙いが俺なら、俺が会えばいいことだ。俺が...俺さえ我慢すればいいんだ。
苦々しい思いで、タクシーを拾い、
後部座席に乗り込むと、雅紀からLINEが。
『お疲れ様、翔ちゃん。今週の金曜日、行ってもいい?』
.....金曜日か..
雅紀、悪いな。たった今、予定が入ったんだ。
『ごめん..金曜日は友達と飲みの予定入れちゃったんだ』
そう返信すると、泣いてる猫のスタンプが送られてきた。
それを見て、思わず笑みが溢れた俺は、
『次の日なら空いてるよ』と送った。
大きな親指のスタンプと一緒に...
すると、『その日は千葉でロケがあって遅くなるかも』と、さっきの猫がふたつ付いてきた。
『いいよ。待ってるから』
それに対しては、
『やったぁー✨』と、踊るカエルがやってきた。
携帯の画面を見ながら、ニヤニヤする俺を、ルームミラー越しに、運転手が怪訝そうな顔で見てた。
俺は、携帯をしまって、素知らぬ顔で外の景色を眺めた。
雅紀には、知られたくない.....
あいつの泣き顔なんか、見たくない....
...ごめんよ、雅紀。
俺はまた、お前に嘘が増える。
流れる夜の街をぼんやりと見ながら、
逃れられない罠に嵌まっていく...
そんな気がしてゾクリとした。
もがけば、もがくぼど、もつれていく鎖のようだ....
智くん.....
俺は、どこに行くんだろう....