第1章 うたかた
【翔side】
「珍しいですね」
マネージャーはそう言って、俺と智くんの顔を交互に見てから、
「それにしても、凄い頭...」
と口元を隠して笑った。
ただでさえ出るのが遅れたのに、途中事故があって回り道を余儀なくされ、湾岸スタジオに着いたのは、集合時間を30分近く過ぎていた。
下手な小細工をする余裕もなく、
俺と智くんは一緒に楽屋に飛び込んだ。
「おはよう〜..遅かったね?」
相葉くんが笑顔で迎えてくれた。
「あれぇ〜?二人揃って、遅刻ですか?」
ニノがゲームから顔を上げた。
「にしても..何で二人ともそんな寝癖?」
松潤が怪訝そうに聞いてきた。
3人の視線が集まる中で、
俺と智くんは顔を見合わせた。
....確かに、これじゃあ、お揃い感、強いな...
「夕べ二人、一緒だったの〜?」
相葉くんのストレートな質問に、
「そうなんだよ〜...たまたま俺んちで、飲もうってことになってさ...そのまま、雑魚寝よ〜..」
笑って答えたけど、何だか3人、怪訝そうな顔をしてる。
........
「...ふぅ〜ん...夕べZEROだったのに〜?」
ニノに指摘され、
....ヤバイ..そうだった!
たまたまって、なんか不自然だ///
....えっと...なんか、いい言い訳...
「大野さん、櫻井さん、急いで着替えて、メイク入ってくださ〜い!」
そこにスタッフが呼びに来て、話は終わった。
助かった〜////
でも、ニノが俺たちを目で追っていた。
...あの顔は、なんか疑ってんな〜..
疑惑の目を向けるニノの視線に気付かない振りして、俺は、メイク室に向かった。
この日をきっかけに、止まっていた運命の歯車が、ゆっくりと動きだしたこと、
この時の俺たちは、知る由もなかった。
夕べ。
彼といても不安で仕方なくて、
いつになく思いが溢れだしそうだったのは、もしかしたら、これから来る大きなうねりの予兆だったのかもしれない。
.....あの時、好きだと、
言ってしまえばよかったんだ//
鏡越しに目が合い、
こっそり微笑み会う俺たちは、
この瞬間だけは、幸せだったんだ...