第9章 消えぬ想い
【翔side】
今日はCMの撮影で、都内のスタジオに来ていた。
雅紀は俺の隣で、テーブルの上に置かれたテレビ誌をペラペラとめくっている。
「翔ちゃん、見て~!セクゾが載ってるよ~。勝利って顔ちっちゃ!!」
「ほんとだ~...5人カッケ~じゃん♪」
すると、反対側でパソコンを弄っていた潤が、
「翔くん、ちょっと、ここ観てくれる~?」
って、俺を呼ぶ。
「え~?何?コンサートの構成??...雅紀も観に来てよ~」
みんなで考えた方がいいって思ったから、雅紀のことを呼んだけど、
「...俺は、いい...」って。
...何だよ~...人任せなんだから..
そこにチーフマネが来て俺たち3人に言った。
「大野が病院に寄って来るから、少し遅くなるけど...あ、二宮も付き添ってるから、一緒に送れる。」
「リーダーどうしたの~?風邪??」
潤がそう聞いたけど、マネははっきりとは言わなかった。
.....智くん、どうしたんだろう...?
!!!!
.....まただ。
耳の奥で鳴りだした不快な音。
一瞬顔を歪める俺に、潤が心配そうに顔を覗き込んだ。
「翔くん、どうしたの?」
......智くん、病院に?
ニノが付き添い?
なんで?...どうして、こんなに胸が苦しんだろう?
俺は、そのままその場に居たら、なにか、思い出さない方がいいことを、思い出してしまいそうで。
慌てて立ち上がった。
「翔ちゃん、どこ行くの!?」
「....ちょっと、トイレ」
「俺も行くよ」
一緒に立ち上がった雅紀に、
「いいから...来ないでくれ..」
そう吐き捨てて部屋を出た。
いつからだろう?
頭の奥に濃い霧のようなものがかかっていて、その先が見えない。
その先にあるものは、本当は俺にとって、一番大切なものなんじゃないかって、そう思うんだけど。
無理に見ようとすると、あのキーンという高い音がして、思考の全てを奪っていく。
思い出すのはただ、5人でいて楽しかった頃の自分とメンバーの笑顔...
あんな笑顔、もうこのところずっと、見たこともない。
俺がいて、潤がいて、雅紀とニノがいて...
俺の隣で、智くんが...
...智くんが......
何?
どうして??
......智くんの顔が思い出せないよ...