第7章 maboroshi
【翔side】
混濁する意識の中で、俺を呼んでいたのは...
何度も何度も、
鳴きながら『翔ちゃん、翔ちゃん』って。
そう優しく抱き締めてくれたのは......
目を開けると、真っ白な天井が見えた。
ここは...?
ここは、どこだろう??
徐々に覚醒していく中で、俺の腕には細い点滴の管。口には酸素マスクが付けられていて。
....ああ、俺病院に居るんだって、繋がった。
それにしても酸素マスクって、もしかして俺、死ぬのかな?
そう思ってもう一度目を閉じてみた。すると、
「翔ちゃん??...気が付いたの??」
俺を呼ぶ、優しい声...
...相葉くん..?
「良かったぁ~!丸二日、寝てたんだよ~///
待ってて...先生、呼んでくるから..」
「まさ...」
雅紀のこと、呼び留めようとして、自分の喉が張りついていて、声が出ないことに気付いた。
でも、雅紀はちゃんと振り返ってくれ、俺の手を握ってくれた。
「大丈夫だよ...翔ちゃん、肺炎起こしたんだ...でも、もう熱も下がったし、意識が戻って、ご飯食べられるようになったら、退院してもいいって...」
雅紀が、泣きそうな顔してそう言った。
「...そう..か..」
相変わらず擦れてる声に、俺は軽く咳ばらいをした。
「先生呼んでくる。待ってて」
雅紀は俺の指にそっと唇を付けてから、部屋を出て行った。
......頭の中で、ぼんやりした意識が、少しずつクリアーになるにつれ、蘇ってくる、あの夜のこと...
......智くん...君は、どうしてる?
その人の顔を、声を、思い出すだけで、涙が溢れた。
「櫻井さ~ん、目が覚めましたね」
白衣の先生は、酸素マスクを外し、俺の胸の音を聞いたり、顔を触ったりして診察した。
「もう大丈夫そうですね...早速今夜からでも、お粥を出しますね...少しずつでも、召し上がってみてください」
「はい...」
先生が行ってしまうと、雅紀が俺の側に来た。
「..ずっと..ついてて..くれたの?」
「仕事は行ってきたよ。後はここに居た...翔ちゃんが目を覚ました時、誰も居ないと寂しいでしょ?」
そう笑った雅紀が、泣いてるみたいで...
俺が両手を伸ばすと、彼は俺の身体をしっかりと抱き締めてくれた。