第12章 来客。
燭台切様の願いを聞き入れ
安静を決め込み献身的な介護を
受けてめでたく全回復した私。
約束通り風邪が治ったので
晴れた空の下の縁側で太陽の
温もりを感じながらのお茶会
乱『主様!主様!これ
すっごく可愛くて美味しいよ!』
差し出された苺クッキーと
五虎退『あの…これも凄く
美味しいですよ…はいどうぞ!』
チョコのクッキーを受け取り
半分こにわければ二人に渡す。
『美味しいものは半分こ、です』
ただ太りたくないだけなのだが
その言葉に二人は顔を赤らめた。
(可愛すぎてお腹いっぱい…。)
紅茶を頂いているとタタタッと
向こうから走ってくる子がいた、
前田藤四郎様と平野藤四郎様
何かを抱えている秋田様だった。
どうしたのかと首を傾げれば
お願いしますと三人お辞儀をした。
前田『あの、そこで拾いました!』
平野『飼ってもよろしいでしょうか』
秋田様に抱えられた黒猫が
"みゃー"と鳴いた。
私が頷けばその場にいた
全員が跳ねて喜んだ。
今更、猫の一匹や二匹…
虎様五匹だっているんだから
たとえその猫が
"ただの猫"じゃなくても…ね。
………猫のカタチをした式神。
霊力を感じて前審神者の式神で
ある事は一目瞭然だった。
私の霊力が広がるこの本丸に
わざわざ来たということは…
動き出したという事か…チッ。
五虎退『主様…?』
私の様子に不安気な五虎退様に
慌てて頭を撫でて誤魔化した。
石切丸『良くないモノが…
入り込んでいるではないか。』
初めて聞く声に振り向けば優雅に
そびえ立つ大太刀…石切丸様がいた。
石切丸『私の刀で切ってやろうか。』
『やめたげて。』
喜ぶ短刀達には聞こえない言葉
殺気のある言葉を遮った。
たとえ式神でもバッサリ切られた
猫など見たくもないわ。
石切丸『じゃあ…どうするんだい?』
『私の霊力が広がるこの本丸で
出来ることなどたかが知れてる。
問題はありません…石切丸様』
石切丸『随分、前審神者の事を
なめているようだね…君は…。
いずれそれが命取りになるだろう』
そう石切丸様は言い残し
踵(きびす)を返して立ち去った。
(…命取りに、か。)
彼の言葉が頭の中を支配し
不穏な影だけが渦を巻いた。
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