• テキストサイズ

狂気の傷痕【刀剣乱舞】

第2章 乱夜。


貞操を守り抜いた私を
誰か褒めて欲しいものである。



加州『………ん、』


ゴソ…っと隣で寝ていた彼は
上半身を起こした私の隙間から
布団へと入る風に身震いした。


夜目に慣れた今彼の姿を
改めて見ると顔が歪むのがわかる。


生気を失い髪質はボロボロ
指先は皮が剥がれ血が滲んだ痕
目元から涙のあとに濃いクマが
くっきりと浮かんでいた。


(ここにいる彼らも
似たような姿なのだろうか…。)


だとしたら非常に厳しい
何かと問われれば私の霊力が
足りるかこれって感じなのだ。


気絶するように眠る彼に
悲痛な眼差しを向けながら布団を
かけて頭を撫でてゆく。


撫でながら深呼吸をし
撫でる手に集中した…うまく
出来たらいいけれど、ハハッ


(霊力注入…ってか、)


資材を使えばいいのだけど
生憎と今は空っぽなので…
直接送り込ませて頂きます。


(あぁ…きっつい。)


繊細なコントロールが必要な
作業に今日の疲労が重なって
先にぶっ倒れそうだ…つらい。


(ぐっ…、っ。)


送りすぎれば毒となり
送らなければ彼らは消える。


嫌なものだ審神者とは…クソッ。


『こんのすけ…。』


こん『はいぃっ…!!!』


『うっさいっ。』


こん『辛辣!!!』


いや、漫才するほどの
余裕ないんだってほんと…。


主様ぁ主様ぁ、と泣き続ける
こんのすけに溜息つきながら
やれやれとばかりに微笑んだ。


『ありがとう…こんのすけ…。』


こん『あ…るじ…さま…。』


『政府の奴らに清光の事
秘密にしてくれたんでしょう?』


こん『…わた…わたくしはぁ…
主様をお守り…出来ない…狐です
約立たずの狐にございます…。』


加州清光の表情が幾らか
落ち着いてきたのでゆっくり
送り続けていた霊力を抑えた。


傍らでボロボロと流し続ける
涙を止めることなくこんのすけは
泣きじゃくっていた…悲痛な声で


こん『ひぐ…ぇぐ…ひっく。』


(泣きすぎだ、馬鹿。)


あまりにも泣き続けるもので
ちょいちょいと狐に手招きをすれば
ポスッと私の腕の中におさまった。





/ 279ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp