第9章 媚薬。
三日月様のキス責めが
終わりを告げゆっくり休めの
言葉をかけてもらったあとに
薬研『失礼する。』
入れ違いで先ほど手入れした
薬研藤四郎様が現れた。
『はい、どうぞ…?』
薬研様の手には小さな鍋が
お盆の上に乗っていて蓋から
湯気がゆらゆら立ち込めていた。
薬研『燭台切の旦那に
粥、作ってもらったが食えるか?』
『えっ…』
食べます食べますと思わず
言葉にせずに頷くと薬研様は
可笑しそうに微笑んだ。
会った時とか大違いの優しい
少し大人びた笑顔だった。
薬研『起きれるか?』
勢いつけて起き上がると
隣に座った薬研様は鍋の蓋を開け
レンゲを取り出して差し出した。
薬研『熱いからな、ゆっくり食え。』
子供かなんかだと思われている
そんな気がしてならないが熱々の
お粥へと口を付けることした。
優しい味わい、卵が使われていて
まろやかでいてしっかりした味付け
少し薄めにつくってあるけれど、
食材の旨みが舌に広がり幸せな時…
『おい…しい…。』
薬研『そうか…、そりゃ
燭台切の旦那も喜ぶさ。』
私がアツアツと食べる中
薬研様は頬を緩ませながら見る。
食べたいのかと思えば
そうではないと言われてしまった。
薬研『一言、礼が言いたくてな。
あと謝罪か…一兄の事も俺の事も。』
『おれい…?』
もぐもぐしながら答えれば
米粒がついてると取ってくれた。
これをさり気なくひょいパクする
恥ずかし過ぎて視線をそらした。
薬研『フッ…あぁ…あいつらの傷
まさか今日中に終わらすとはな…。
一兄の事も許してくれたとか、』
『怒ってなどいませんでしたし…』
薬研『俺はあんたに
敵意を向けた、帰れと言ったしな』
『状況が状況でしたし仕方ありません』
どこまでもお人好しだな
なんて呆れた顔をされてしまい
苦笑いで返せば笑ってくれた。
薬研『感謝してもしきれない。
感謝するぞ、大将。』
"大将"それは私を認めてくれた
瞬間だった。
私はレンゲを持つ手が止まり
薬研様を見つめた。
薬研『これからよろしく頼む』
その一言に一粒の涙を零した。
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